2016年11月16日、事前交流として国立病院機構福山医療センターから医師、看護師、調整員の3名が徳島県牟岐町を目指しました。福山医療センターの岩垣博己院長はAMDA設立前より岡山大学アジア伝統医学研究会の設立メンバーとしてAMDAグループ菅波代表と活動したご縁があり積極的にご協力頂いています。南海トラフ災害時に福山医療センターは、牟岐町に医療チームを派遣し支援に入って頂く予定です。
AMDAでは南海トラフ災害対応への取り組みのひとつとして、被災地となる基礎自治体と医療チームを派遣して下さる協力医療機関との事前交流を行っています。関係機関との顔合わせにより平時から顔の見える関係をつくり、実際の活動場所と想定される施設を事前に訪れることでどんな場所でどのように活動するか、具体的なイメージを持つことができます。
晴れわたる青空の中、岡山より瀬戸大橋を渡り徳島県内に入った一行は、最初に後方支援拠点となる2病院を訪れました。美馬市のホウエツ病院は、ベッド数65床の病院ながら四国全体の救急医療において欠かせない存在で、自衛隊機も着陸可能なヘリポートを有しています。一行は林院長とともに広いヘリポートの中を歩きながら、照明設備や侵入角度指示灯などの説明を受けました。その後吉野川市のさくら診療所も訪問、吉田院長へご挨拶と情報共有を行いました。
続いて徳島市内から2時間かけて牟岐町役場へ向かいました。牟岐町は南海トラフ沿いで最大規模の地震が発生した場合、ほとんどの低平地で震度7の強い揺れが想定されており、津波影響開始時間の想定は約11分、最大津波水位想定は9.8mです。職員の方が、町独自に作成した津波避難マップを用いてご説明下さいました。
牟岐町の医療面での関係機関として、地域災害拠点病院である海部病院を訪れました。現在の海部病院は、海に近い立地で南海トラフ災害による津波被害が懸念されており、抜本的な津波対策として津波被害の及ばない高台への移転をすすめています。坂東病院長自ら南海トラフ災害の際に最前線基地となる建築中の新病院をご案内頂き、免震構造や2つのヘリポートの用途、発災した際に人であふれ返り混乱が予想される中で病院機能と避難場所をどのように分けるかなど具体的イメージを共有くださいました。また、隣接の美波町国民健康保険美波病院へも訪問しました。
避難所関係は、牟岐町内で指定されている避難所の牟岐小学校・中学校、老人保健施設「和楽」、特別養護老人ホーム「緑風荘」を訪れました。AMDAは、南海トラフ災害時可能な限り早期に避難所へ入り避難所医療を展開することを目標としています。
事前交流に参加した医療チームメンバーは「実際に学校で行われた防災キャンプの中で飲料水や食料の確保、避難所設営などを子どもたちが体験し南海トラフ地震に備えているという話を聞いて、地域全体で力を入れていることがわかった」と語っていました。また、牟岐中学校の校長先生は「平時にこうして顔合わせして繋がっておくことは大切、子どもたちも、災害を身近に感じているのでこうして気にして下さるのは本当に心強い」と語っていました。
平時に事前交流を行うことで、お互いに理解を深まり実際に南海トラフ災害が発災した際により多くの被災者の命を救うことに繋がることを願います。