今後起こりうる可能性が非常に高いとされている南海トラフ災害への取り組みとして、認定特定非営利活動法人AMDA(アムダ)が中心となって、自治体、医療機関、企業、NPOなどが一体となり、災害で起こったさいの支援活動がスムーズに行うことができるよう事前に連携準備を進めておくためのネットワーク形式のプラットフォームです。
過去の大規模災害での反省を、今後起こりうる災害への備えに
1995年に発生した阪神淡路大震災。2004年に発生した新潟中越沖地震。そして2011年に発生した東日本大震災。いずれの被災地でもAMDAは医療支援活動を実施しました。
災害発生直後の混沌とした混乱状態の中、限られた状況の中で避難所などでの医療支援活動を実施してきました。いずれも「まさかこの場所で、こんな災害が起きるとは」という思いの中、被災者の方たちは当然、混乱、絶望、悲しみ、疲労という厳しい精神状況の中、肉体的にも大変な状況で避難生活を余儀なくされます。
一方で、全国から集まってくる支援の手、物資や支援ボランティアなどを受け入れる自治体も、当然被災し、混乱状態。そして被災地の医療機関も混乱。「被災した」という現状への対応に追われる中、これまでに経験のない「支援の受け入れ」。過去の災害から「マニュアルの整備」などは進みつつあるものの、それぞれが直下型の地震、津波など災害の種類が違い、判断が難しい。まさに、災害時に一番必要な「冷静かつ迅速な受け入れ」の実現は困難を極めます。
また支援する側にとってもルールがない中、「助けたい、力になりたい」というはやる気持ちで大量の物資が届いたたり、支援ボランティアと偽った詐欺まがいのグループが出現するもの悲しい事実。このようなリスクの見極めのためにも、受け入れる被災地自体や医療機関は慎重にならざるを得ないのが現実です。
備えられる災害だからこそ、「憂いがあるから備える」
地震大国日本。特にここ数年、東日本大震災以降、首都直下型地震、南海トラフ地震、東海沖地震など「ここ30年以内に起こりうる災害」という認識で政府も警告を呼びかけ、関係の自治体では防災マップの作成や備蓄などを進めています。
そんな中AMDAでは、これまでの行ってきた国内外における大災害の支援活動を踏まえて、起こりうる災害の一つである「南海トラフ地震」への備えに向けて2014年から具体的に動きを始めました。これまでの経験をもとに、自然災害自体は避けることができないけれども、災害発災後の被災地の状況は「備え」があれば、大きく違う。これは、物資だけの「備え」ではなく、人的な「備え」やネットワークの整備、アクセスの検討などの目に見えない「備え」も含んでいます。
被災者の人たちが、一番心を痛めている時期に、迅速かつ的確な支援を提供することで、少しでも心身ともに良い状況につながれば…まさに「過去の災害を未来に生かす」、「憂いがあるからこそ備える」この気持ちで、プラットフォーム化のスタートを切りました。
過去の課題は未来の希望
南海トラフ地震が発災した場合、被害が大きく予想され、さらに支援が届きにくいと予想されるエリアとして徳島県と高知県があげられます。津波の被害予想も大きい上に、本州からのアクセスが限られ、かつ四国内の主要道路や空港は海側にあるため、四国内でのアクセスの課題も山積みです。
実際、AMDAが行った東日本大震災の支援活動では、発災当日から支援活動をスタートし、被災地には翌日には到着。その後、約40日間、医療チームや物資を絶えず被災地に派遣し、医療支援活動を行いました。そして復興支援に切り替え、2017年7月現在も、現地主導(ローカルイニシアティブ)での活動を継続しています。
この支援活動を通じて、初動時の情報収集の困難さアクセスの難しさ、支援活動時の物資の不足ほか様々な問題に直面しました。この課題こそが、将来起こりうる災害への的確な備えにつながると確信しています。
被災想定地と二人三脚で10の分野に分けて大災害に備える
AMDAでは、南海トラフ大地震は、備えられる災害と考えています。
だからこそ、前述のような課題を洗い出し、「アクセス」「通信」「備蓄」など、10のカテゴリーに分け、被災想定地と連携をとりながら大災害に備えることが、重要だと考えています。どんなに準備しておいても「まさか」が起きるのが災害です。この事前準備を、さらにネットワーク型の連携を行い準備を進めることで、その「まさか」に柔軟な対応がしやすくなると考えています。
困ったときはお互い様、相互扶助のネットワークをプラットフォーム化へ
現在、被災想定地として連携を行っている自治体は2県9市町。この被災地に向けて支援を行うために立ち上がってくださっているのが、5の基礎自治体と複数の医療機関、そして企業や団体。まさに善意の思い、「困ったときはお互い様」の気持ちで出来上がったこのネットワークを、プラットフォーム化することで、より多くの方に参加していただきたいと考えています。
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