日頃医薬品準備等でご協力頂いている、アイ薬局(岡山県総社市)が「移動型調剤車」を導入しました。
導入を決めたのはアイ薬局村木理英社長、監修したのはこれまでAMDA熊本地震緊急救援活動への参加など、医薬品管理に関する助言を継続的に頂いている薬剤師、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の名倉弘哲教授(救急薬学)です。
こうした「動く薬局」のような調剤設備のある移動型調剤車は、2011年の東日本大震災を教訓に全国で導入、いわゆるモバイルファーマシーと呼ばれます。これまでに宮城、和歌山、広島、鳥取、大分、八千代市(千葉県)、三重県の7つの県と地域に導入されています。
AMDAとモバイルファーマシーの関わりは2016年の熊本地震支援にさかのぼります。当時医療支援を実施していた益城町の薬局が壊滅していたことから、AMDAは医薬品を自力で確保した限られた量の医薬品と県や医師会からの供給に頼っている状況でした。そのような中、大分県薬剤師会から派遣されたモバイルファーマシーが近くで活動していることがわかり、処方箋に基づいた医薬品の調合や手元に不足している医薬品を薬剤師に対応頂き非常に助かったという経緯があります。自力で移動し、自家発電機能を備えていることからライフラインが壊滅しても、自己完結が可能であることが最大のメリットです。
今回のアイ薬局での移動型調剤車の導入は、個人(民間)所有として日本初、以前はドクターカーだったものを改修し完成しました。調剤に必要な調剤台、分包機、無菌調剤台、小型冷蔵庫などを設備を備えています。屋根にソーラーパネル、後ろには小型発電機を搭載し、災害時の電力供給にも工夫を凝らしています。慢性的な疾患に対応する医薬品を中心に、約3日分、100種類ほどの医薬品を積載することができます。
完成に至るまでの思いを村木社長が語ってくださいました。
「最初は、災害時に薬剤師が役に立つとは思ってもみなかった。最初名倉先生から話があり、これは必ず必要だと思った。同時に、災害時に薬剤師にもできることがあるとわかった。災害時の医薬品供給の遅れは命に係わると思う。いざという時のためにいつでも出動できる体制を整えたい。AMDAが南海トラフ災害時に本部を置くのは総社市中央公民館と聞き、アイ薬局は総社市に店舗があり市役所からも中央公民館からも非常に近いのでお役に立てると思う。岡山は災害が少なく、まだまだ災害対応への意識が薄いと感じている。平時は総社市民の意識向上のためにも、地域の防災教育や薬局の仕事を知ってもらうツールとしてもぜひ活用したい」と語りました。
ご子息も薬剤師として活躍されており、AMDAが参加する防災訓練にボランティアで関わって下さっています。村木社長のように、熱い思いで私たちの活動に参加くださっている方々とともに、AMDAは引き続き、南海トラフ大災害への備えをすすめます。