東日本大震災からの学び:ケースメソッドの紹介『基礎自治体職員等の直面した苦悩』


一般社団法人 Bridge for Fukushima代表理事 伴場賢一

東日本大震災において、地震・津波に加え原発の災害を受けた原発周辺20km圏内の自治体では、発災後津波や地震の被害も十分に確認できないまま、避難命令が発令され、短時間のうちに町民・村民の全員の避難を余儀なくされました。その混乱を極める状況の中で避難と避難生活を支えたのは、自分たちも被害者でありながら現場の自治体職員や避難の支援をした団体職員等でした。Bridge for Fukushimaでは、その貴重な現場での経験をケース として、基礎自治体や教員をはじめ、今後の発災に向けた研修事業を行っています。

【ケースの事例】
<1>浪江町役場(基礎自治体職員向け)

浪江町役場の職員全員の行動記録と、20名の職員からのヒアリングを基にしたケース。中堅職員の経験した津波の現場から避難誘導、避難所運営の2つのケースからなり、それぞれの現場で起こった課題を追体験していただきます。

<2>請戸小学校 (学校関係者向け)
浪江町沿岸部に位置し、地震発生後1時間で学校2階部分まで達する津波が起こった小学校。幸いに教員が主導し児童は1km離れた高台に避難。全員が無事だった。

<3>障がい者施設(保健福祉関係者)
福島第一原発から15kmに位置する、富岡町の障がい者施設の施設長のケース。震災直後から停電に見舞われ、翌朝には全員避難を指示される中、60名近い障がい者を一堂に避難させるにあたる意思決定のあり方を考えます。

研修は1ケース当たり1時間半から2時間程度、人数は8~80名まで。グループワークと全体での討議形式を相互で行います。現在まで、政策研究大学院の防災対策授業やハーバード大学公共政策大学院(ケネディースクール)、浪江町等様々な形で研修を行っています。

ケースメソッドは、欧米の大学院で用いられている教育手法の一つで、実際に起きた事例を教材として、あらゆる事態に適した最善策を、討議し導き出す教育手法です。
リアルな課題を追体験することで、問題解決力と理論的思考を磨く手法であること、グループワークによりほかの方の考え方を学ぶことで意思決定の幅が広がることから、近年では国内でも企業や行政もケースメソッドを用いた研修が増加しています。

一般社団法人 Bridge for Fukushima代表理事 伴場賢一
2000年よりAMDAの職員としてカンボジアやザンビアの駐在代表として勤務。2001年のエルサルバドル大震災では、緊急救援の調整員として現地に派遣。その後イギリスの大学院で公共政策を学び、国連(FAO)やJICAの専門家として途上国援助にかかわる。2011年の震災直後に地元福島に戻り、Bridge for Fukushimaを設立。復興支援の活動を行う。この間、復興庁の政策調査官としても復興に携わる。現在は福島県総合計画審議委員。

これらの研修についてのお問合せ先
一般社団法人 Bridge for Fukushima
電話/FAX:024-503-9069
Email: bamba@peace.ocn.ne.jp
本部:〒960-8061 福島県福島市五月町2-22