2017年2月5日、平成28年度全日本病院協会主催災害訓練が主催が全日本病院協会、全日本病院協会徳島県支部、ホウエツ病院共催徳島県医師会・美馬市でホウエツ病院及び3つの会場で実施されました。
全日本病院協会は災害時医療支援活動班AMATを持ち災害の急性期~亜急性期において災害時要援護者にも配慮した医療救護活動を実施できる医療チームとして協会会員病院支援、災害時要援護者支援、患者の病院間搬送を担います。
徳島県美馬市は公的病院が無く小規模民間病院のホウエツ病院が二次病院を担います。県内の基幹病院、地域の医療、介護、福祉と常に連携を取っており南海トラフ災害が起きた際、これらの連携をどう活かし急性期から対応していくかを中心に訓練は進みました。このホウエツ病院の林秀樹理事長がAMDA南海トラフ災害対応プラットフォームの運営委員長をして頂いており、AMDAも徳島県・美馬市と協定を締結し災害支援に入る予定となっていることから今回訓練に参加する運びとなりました。
AMDAからは南海トラフ災害対応プラットフォーム協力医療機関である赤穂中央病院(兵庫県赤穂市)、倉敷平成病院(岡山県倉敷市)、倉敷成人病センター(岡山県倉敷市)、諸國眞太郎クリニック(岡山県岡山市)の4医療機関10名が訓練に参加、人的拠点としてご協力頂くさくら診療所(徳島県吉野川市)の院長、吉田修医師にもご協力頂きました。
四国は発災当初外からヘリなどの支援は厳しい事が予想されています。特に徳島県民は約87%が沿岸に居住し、自衛隊、海上保安部、防災ヘリ、警察ヘリ、ドクターヘリが1つに統制されお互いが連携しなければ被災された方々を搬送できません。この中で緊急の医療を要する方をホウエツ病院ヘリポートへ空輸、また徳島県内で対応困難な方を県外へ搬送します。AMDAは地元の相互扶助組織である地域連携の会~絆~との関わりが強い福祉避難所として指定されている特別養護老人ホーム家康で福祉避難所の救護室立ち上げを担当し、AMATを通じ緊急医療が必要な方をホウエツ病院へ搬送という訓練を行いました。これらを実現する為に徳島県危機管理部、保健福祉部、県西部総合県民局、美馬保健所、美馬市危機管理部、美馬市消防、美馬警察、県航空運用調整班、陸上自衛隊第14旅団、海上保安部、県警ヘリ、防災ヘリ、ドクターヘリ、健祥会特別養護老人ホーム家康を中心とした地元組織、県内DMAT、AMATなど約300名が集まった大規模訓練となりました。
AMDAチームの動きは当日、10時にホウエツ病院に到着。ホウエツ病院内に設置された美馬市災害対策本部へ到着を報告、福祉避難所での救護室立上げの指示を受けました。前日の2月4日夕方に南海トラフ巨大地震が発生、医療チーム到着前より福祉避難所へ続々と避難者がやってきており、施設は電気、ガス、水道は使用不可という設定で実際に停電の中訓練が開始となりました。まず福祉避難所内で運営主体の特別養護老人ホーム健祥会家康の職員の方に施設をご案内頂いた後、玄関先、救護室とチームに分かれ活動を行いました。
チームは最初に発電機を回し投光器を使用してライトを準備、その後救護室の立上げ、トリアージタグを使用した優先順位の決定、施設内の巡回、急病患者の対応、通信機器を使用した物資の要請訓練等を実施しました。美馬市災害対策本部へも訓練人員2名を配置し福祉避難所の医療チームとの通信訓練も行いました。当日の天候は雨で衛星携帯電話が使用できずIP無線で対応、投光器が接続不良のため途中で使用できず暗い中診療にあたるなど実際に起こり得るトラブルも起きました。患者役は実際に地元に暮らす方が担当され、必死の表情で「命からがら逃げてきた」と発災当初の混乱した状況さながらでした。
訓練参加者(調整員)からは「実際に災害が発生した場合は訓練以上にパニック状態での対応が想定されるが、災害時に近い状態で訓練ができたことは極めて有効なものであったと思う。全体の流れをいち早く理解することで、自らの役割が明確となり、積極的に活動ができると感じた」と振り返りがありました。発災後可能な限り早い段階での避難所医療支援を目指すAMDAにとっても避難所内外での効率の良い患者情報の共有、災害対策本部との連絡共有という課題も明らかになり今後に繋げていきたいと考えています。